Serenachan’s blog

音楽ジャンキー 

ボカロ好きだった私の今

最近、様々なタイプの音楽を聴くようになった。具体的には、アシッドジャズや邦ロック、シティポップ、アイドルソング、そして日本語ラップである。
しかし、思い返してみると、私は昔Jpopばかり聞いていた。八年くらい前で、YUIやいきものがかりコブクロの最盛期であった。私も私の親もあまり音楽を熱心に聴くタチではなく、メディアでよく見るアーティストしか知らなかったのである。
そんな私の音楽に対する視界は、少しばかりではあるけど広がった。その契機は何なのかと考えると、それはボカロな気がするのだ。

私は中高生のころ、熱心にボカロを聴いていた。毎日ニコニコをチェックして、ランキングを見るのが日課だったほどだ。世間では、私が高校生になったころから大人たちにもボカロの存在が注目されはじめ、分析本が出たり、テレビでも若者に人気なカルチャーとして情報番組などで取り上げられてきた。その多くは、「なぜ」ボカロが人気なのかを丁寧にひも解いていた。しかし、ボカロを聴く世代の音楽観がどのように変化したのかはあまり書かれていない気がする。そこで、ボカロ流行時代にどっぷりつかった私自身、ボカロカルチャーにどのように影響を受けたのだろうかとはたと思った。

普通の音楽とボカロでは、楽曲との出会い方が全く違う。例えば、動画サイトで誰かの楽曲を聴きたいとする。その時に検索ボックスに入れるのは、アーティストの名前だ。「乃木坂46」と入れれば、検索結果では乃木坂の楽曲のみが出てくる。サジェストでも、出てくるのはきっと性質の似たアイドル楽曲だろう。しかしボカロの場合はそれが少し違う。「初音ミク」と検索すると、確かに初音ミクが使われた楽曲が出てくる。しかし、その曲たちは違う作曲家たちの作った、雰囲気の違う曲なのである。

ネットで音楽を聴くとき、最低限アーティストの名前または曲名を知らなければ、その音楽に到達することはできない。しかし、その限界を突破したのがボカロという存在だった。初音ミクというフィルターを通して、思いもかけなかった音楽との出会いが生まれたのだ。もちろん、Jpopが似たような曲ばかりだということではない。しかし、一定の大勢から支持を得る、聞き心地のいい曲が多いと思う。激しすぎず、まとまっていて、歌詞も恋愛に関連したものが多い。対して、ニコニコ動画内にあるボカロランキングの中には、様々な楽曲があった。作曲家たちのルーツが違うのだから、当然といえば当然だ。また、テレビなどの規制がないからか、歌詞も少し過激なものが多かったように思う。そのようにして、新しいジャンルの音楽に耳をならしていったのだ。

まず最初に驚いたのは、wowakaさんの楽曲だった。あんなに歌詞が詰まっていて、手数の多い曲は聞いたことがなかったと思う。歌詞も、言葉遊びのようなもので、そこも衝撃的だった。何も考えずに、ただただリズムに身をゆだねるのが心地よくて、ずっと聴いていた記憶がある。また、just be friendsや流線プリズム、waveのようなクラブっぽい音楽にも出会った。そして、天樂や東京テディベアなどの重くてダークだけどアガれるロック…。自分のなかでは、ボーカロイドの楽曲ということで一緒くたになっていたから、ジャンルの違いを下手に意識することがなかったし、ジャンル分けしようとも思わなかった。それがよかったのだろう。

こうして、色んなジャンルの片鱗に触れた。ボあカロ沼から抜け出した時には、はまる前にはノれなかった音楽にノれるようになっていた。昔は聴き方がわからなかったものが、聴けるようになった。オタク文化だと揶揄されがちなボカロだが、私の音楽の地平を広げてくれたのは確かである。もし私のような人間がある程度いるとしたら…。これから、もっと多様多種なジャンル・歌詞の音楽が支持されるようになるかもしれない。